えりも短角牛
えりも短角牛は、北海道の中央南端に位置する「えりも岬」で育った「日本短角種」になります。我が国が認める和牛の一種で、きびしい自然環境にも耐え、牧草などの少ない栄養価の粗飼料でも育つことから、北海道では漁民たちの海が閉ざされる冬の収入源として飼育が始まった歴史を持ちます。
短角和牛自体は、アメリカの「ショートホーン」と日本の黒毛和牛の交雑から始まっており、北海道ではさらに他の種も交雑され、現在の「短角牛」の品種なりました。北海道の短角牛の歴史は、東北に次ぐ飼育数になっています。
えりも岬
北海道南部にある「えりも町」は、北海道を縦断する日高山脈の最南端にある町です。地名の由来は、先住民族「アイヌ」の言葉で「エンルム」(岬の意)とされています。短角牛が放牧されている牧草地は、このえりも町でもさらに先端の「えりも岬」であり、風速10m/sの強風が一年のうち250日以上吹いている、とても風の強い地域です。その潮風は塩分などのミネラルを含み、短角牛が食する牧草に付着し、それを食べて育った牛は、「プレ・サレ」と言えるでしょう。うまさの秘訣の一つです。
本来の飼育方法ではない
短角牛は、本来の目的からすると、粗飼料で大きくするので、エサ代が少なく済むのに、そこそこおいしい牛肉になる。と言うのが特徴でした。しかし、それは「おいしい牛肉である」と言うことにはなりません。そこそこおいしくなる短角牛に、丹精に良い飼料を与えることにより、さらにおいしい極上の牛になると言うのが「えりも短角牛」の考え方です。基本は放牧でミネラルたっぷりの牧草を食べ、出荷前には牛舎にてめいっぱいおいしい「穀物飼料」で仕上げます。したがって、旨味のある赤身でありながら、脂肪分も蓄えたおいしい牛肉に仕上がります。
料理から見る短角牛
近年、牛肉の嗜好は変化しつつあります。これまでは、脂肪が豊富に入り、やわらかく、わかりやすい味がもっとも好まれて来ました。しかし、ここ最近では噛むほどに旨味が溢れ出る肉が脚光を浴び、この2通りの好みにより牛肉も二分し始めました。短角牛はイメージとして赤身の肉であり、ある程度熟成させて旨味を引き出し、手間のかかる調理方法と言うイメージでしたが、「えりも短角牛」は、短角の旨味をそのままに、ある程度穀物肥育することで脂肪分なども程よく入り、扱いやすく、二分された嗜好のちょうど中間的な肉と言えます。